no.11 デザイナーインタビュー #305 信濃康博

デザイナーインタビュー #305 信濃康博(信濃設計研究所/建築家)

2004年から8年間。弊社と共にリノベーションに取り組んできた信濃さん。築34年の新高砂マンション、自らリノベーション設計した仕事場でお話を伺いました。

『リ・イマジネーション時代。収益システムの構築。リノベーションは仮面ライダーと似ているんですね。』

Q:お仕事について教えてください。
A:新築では住宅、え~一戸建て。集合住宅。え~職場空間としてのテナントビル、工場。で、住宅の中では、いわゆる企画で面白いところでコーポラティブ方式。うん。お客さん希望の住宅とは別にコーポラティブ方式で住宅をつくるという事。新築ですね。リノベーションで言えば、吉原住宅さんのお部屋をやってきました。ビルの大規模改修もですかね。 建築家として研究、考えをまとめる、述べていくためにブログなどで情報発信してますね。

Q:具体的にどのような研究を?
A:時代の変化とリノベーションがいろいろ関係あることが分かってきて。大前提となる時代の変化。大転換期ですね。それが社会全体のいろんなところで見られると。その中の一現象がリノベーションであると。そのあたりを研究しているわけですね。まあ、近代になって近代の目標が満たされてきて。で、人の考え方が変わってきたんでリノベーションが成り立つようになってきたわけですね。仮面ライダーと似てるんですね。 つまり、「リ・イマジネーション(再創造)」の世界ですね。

<プリントアウト中。30秒程度の沈黙>

Q:信濃さんの価値感も大転換していますか?
A:ええ、私の価値感も変化していってますね。どこの分野もリノベーションしてるわけですよね。イノベーションですね。大方向転換。

<シャツシャっ プリントアウトする音 20秒くらい>

仮面ライダーディケイド。結局ですね、仮面ライダーができたのは1971年位なので築45年ぐらいの建物と大体同じなんですよ。で、30年経って平成ライダーってのが始まるんですね。で結局ですね、2000年位までは完全に敵がはっきりしてて味方がやっつける。その繰り返しでよかったわけですよ。コンセプトは同じで。敵と味方がちょっと変わるだけで。で、飽きてくるわけですよ。衰退してくるわけですよね。
その頃は、建物で言い替えるとリフォーム時代。年数がたってくると人気が落ちてきて、多少表現をリフォームするんですけど相対的には落ちて行って衰退していくと。2000年になると平成ライダー時代、え~建物ではちょうど30年経って大規模改修時代に入ってきて。リノベーション時代。建物でいうとリノベーション時代ですけど、世の中でいうと「リ・イマジネーション」時代。結局。収益システムの構築。常に価値を更新していく。前提となる敵がどうとか味方とか。設定を変えているわけですね。あの~毎回毎回。そういう風にしとかないと飽きちゃう。で~、敵がいいのか、味方が悪いのか。善悪の部分もあいまいになってきてて。白黒つけられない感じ。
以外とその辺がそれぞれリンクしてるんですね~。

うん、新しい価値、新しい仮面ライダーを再設定してコンセプトも変えて前提も変えちゃって。毎年違う話にしている。でグッズを売って、ライダー関連グッズでもうけて。他のとこ入ってきてないんですよね。自分達の中で収益システムをつくってしまったわけです。という話ですね。
でまた今度2030年ぐらい。次の時代変化があるだろうって事ですね。今のやり方がさあどれくらい続けることができるでしょうってところですかね~。

<プリントアウト中。30秒程度の沈黙>

これがある程度全体がわかる図。これで大体リノベーションの特質が分かってきたわけでね。まあ、軸を3本設定して。モダンデザインが以前は上位にいたんですけど、リノベーション世代になるのと同じような感じなんですね、これまでの山王マンションのお部屋を見比べればわかるんですけど。まあ素人、学生、全く別のジャンルの人がデザインしても、住まい手にはそんなの関係なくて同じようなレベル、というか単なる選択肢の一つでしかないわけですね。縦軸。プロ/アマ。職人技/DIY。昔はプロ/職人技がいいって言われていたわけですよ。けどこっち(アマ/DIY)がいいって人も出てきたわけですよ。そんな感じになってきて。(苦笑)恐ろしいですよ。でね、この部屋もさほどザックリな仕上がりな訳ですよ。それがまた雰囲気にあってるような感じで。だから簡単に上下は付けられないような感じで。で社会的に分かりやすい標準的なお部屋とか、反対にすごくアーティスティックでコンセプチャルなお部屋とかあってこの表で今まで作ってきたお部屋が分類できるんじゃないかと。で最近この辺(左上あたり)が広がってきたと。ようやく住まいもファッション化してきた、いわゆる一般文化のところまできたと。そういうことですね。住まいは遅かったですね。そういう大きな変化が見受けられると。

Q:これまでリノベーションしてきたお部屋について教えてください。

A:で~、これまで私がやってきたリノベ。山王マンションでいえばですね、最初は2004年。ここでは、あ~。402号室603号室。リノベーションというイメージを植え付けるために全く違った文脈と言いますかね、新しさを際立たせたデザインにして。実際見た人も驚くような。イメージの転換ですね。ここは。これも平成ライダーが出た時はみんな驚いたと。同じですね。昔のファンの人たちを怒っちゃったり。だから新しくするにはそうしないといけないわけですね。でそこでイメージ付けして。でその後僕の場合は新高砂マンション。

2005年。206号室、ここですね。(現在事務所として借りている)ここは「がらんどう作戦」。予算の関係もあり。で~「ゼロLDK」ってコンセプトで。がらんどうにしてその後は全部お客さんにやってもらおうと。自由にできる余白をつくったんですね。で自由に間取りは組んで下さいと。
その辺はリノベーションのマイナスのデザインですかね。基本的には部屋づくりができる人、意識の高い人に入ってきてほしいので、え~与えるだけじゃなくて自分でレイアウトしたい人も出てきているだろうと。だから引くわけではないんですね。引くわけではなく。無いことで価値が足されるという。その、なんでもかんでも付けくわえることが戦後日本の文化じゃないですか。でなくてなにもない方が豊かなくらしができるというあり方ですね。うん。

そして、山王R。2007年。このあたりから価値のフラット化が分かってきたわけですよ。山王Rはリノベーションにいろんなバリエーションがあることを出せたのが良かったんじゃないでしょうか。設計とかインテリアとか仕事としていない人がやったってことが大きかったですね。高砂女子Rとかもそうです。だからプロがやらなくていいんだよっと。プロがいてアマチュアがいてって構造が崩れ去って。バあっとべちゃっとなって。でそのあと広がって。で誰がデザインしようと関係無くなってね。お客さんも多様化してきてね。それぞれのお客さんが作る、そんな感じですよね。見てたら。別にプロがやった部屋じゃなくちゃだめだって人も減ってきたし。

A:建築家、プロとして信濃さんはどうしてくのですか?
Q:プロだからどうこうでは無くなってきたってわけですよ。(苦笑)リノベは誰でもできちゃう。服を着替えるように部屋を選ぶ時代ですから。服を選ぶ感覚と同じですからね。うん。で、住まいにこだわりもってる人、増えてきましたよね。ちょっと違う部屋に住んで見たいと。

Q:家の中にいる時間が以前と比較してだいぶ増えてきたんじゃないですかね。ネット社会がそうさせているのかもですね。
A:ネット社会、もう全体に広がってきてますね。影響を及ぼしてますよね。音楽関係は全く変わったし。新聞雑誌、マスコミ関係。教育関係もかわってますよね。

Q:情報の量とはまた別のところにあるような。
A:情報量。確かにありますね。あふれちゃて全然知らない人もいますからね。人一人の中で受け入れた情報が増えたかというとそういうわけではなくて。ある程度許容量があるからですね。うん。

<プリントアウト中。30秒程度の沈黙>

Q:これは。

A:住居、職場、サードプレイス。生活、仕事、脆弱な契約。昔はある程度一体化していたんですね。会社、家族。核家族とサラリーマンが一体化して社会を形成していたわけですね。この辺がばらばらになってきたわけですね。で、生活を大切にする、家族は大切にする、仕事は仕事と割り切る。個人的にこういうのができてくると、仕事とは違う自分名刺①、名刺②。自宅、職場、ロジ研みたいな。ふふふ。

Q:仕事以外での自分の居場所を信濃さんも求めているんですね。
A:うん、あるみたいですね。けっこう。無い人もいますけど。けど発散する場がないとつらいですよね。なんかね。でここ(家庭)もばらばらになってきましたからね。安定ではなくなってきたと。不安定。だからサードプレイス的なものがあれば全体的に安定するんじゃないかと。はたしてそうなるのかみたいな。
でこの3つの要素(生活・仕事・サードプレイス)のどれを重視するかってのはバラけてきた感じですよね。例えばお金を稼ぐための仕事として割り切って。趣味にお金かけて楽しむ見たいな。
でこの辺(住居のサードプレイス化)がリノベーション、空間と結びついてきてるんじゃないかみたいな。てことがだんだんわかってきた。

山王Rでそれほど価値ある、価値ないってのが個人の裁量にかかってくる、こう全部並べて順番付けられなくなってて。あの13部屋でどれが1番でどれがビリかって。でそんなの出してもなんの意味もなくなった感じですね。うん、全く。それが多少人気の差があったとしてもそれが何だっていう。

Q:そんな感覚ってここ10年ぐらいで大きく変わってますよね
A:その辺が面白い。

Q:で今回の続・山王Rのお部屋は

A:この図ですね。え~1968年の空間に2012年の空間が入り込む。まあここで1968年と2012年の時間と空間の旅。ここで40年。時間と空間を瞬間移動。そんな部屋を目指しています。

Q:今回のリノベーションは今までと全然違いますけど。なぜですか?
A:それは表現の話にもなりますけど。そうですね。今時代の変換期をどう分かってもらえるか。うん。まぁ、完全スケルトン、全部新しくするのもいいんですけどね。建物全体を考えて時間の流れを考えてもらいたい。それが新築にはないリノベーションの特徴なんですね。時間軸。その時間軸が建物に残ってるから感じられるわけですよ。それを感じてもらって。それを踏まえて未来のことも考えなくては。それを考えると長い歴史の中である一定の時間をうけもっているという感じですかね。うん、建ったときに関わった人って今いないじゃないですか。で使い終わるときに今関わっている人がいるかどうかわからないわけですよね。過去の建物の歴史をしりまた次の世代に引き継ぐようなその辺を感じてほしいですね。感じてもらい事で文化的に豊かになるのではないですかね。

Interview&Photo(信濃氏事務所内):北嵜剛司
Photo(リノベーション):松本和生

プロフィール:信濃康博(信濃設計研究所/建築家)
1965年生まれ「新人類世代」。日本の大衆文化にどっぷり浸かり大学で建築を学び始める。重力・構造・曲線・曲面・多面体・トポロジー・4D等かたちの特性について傾倒。ポップカルチャーの中で建築を考える。福岡と埼玉で活動中。

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